スキャナ保存対応した方が良いのかしなくても良いのか知りたい事業者
0342024年1月以降 電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応するか迷ったら?
小規模事業者経理含む事務全般を一人で対応していてこれ以上の事務負担はきつい
個人事業主やフリーランス今のところ量的に自分だけで経理事務はどうにかなっているけど、電子帳簿保存法まではちょっとよく分からない
このような状況になっていませんか??
電子帳簿保存法についてですが、電子帳簿保存法の中身は、3タイプ(区分)あり、それぞれ要件が変わります。
- ①電子取引(義務化)
- ②スキャナ保存(任意)
- ③電子帳簿・書類保存(任意)
電子取引は電子的な取引が1つでも事業者は対応する必要があるので「嫌でも」対応準備をしましょう。現代の商習慣を考えるとほぼ全事業者が対応する必要があると言えるでしょう。
参考)[006]で、電子帳簿保存法は何を対応すれば良いの?もご覧ください。
直近に注目すると、「②スキャナ保存」「③電子帳簿・書類保存」は、任意のため無理して対応する必要はありません。
長い目で見ると、いずれスキャナ保存も電子帳簿・書類保存も対応しなければいけない日が来るかもしれませんが、直近では、対応するのが難しそうなら対応する必要はありません。今まで通り紙で保存しておけば大丈夫です。
業務システムや会計ソフトの中には、スキャナ保存をやることが前提のようになっているものもあるようなので、読者の方の中には『スキャナ保存もやらなきゃいけないの?』と感じている方もいらっしゃいますが、法的には、スキャナ保存に対応してもしなくても、どちらでも大丈夫です
電子的な取引が1つでもあると①の電子取引の要件に対応する必要があります。
②スキャナ保存、③電子帳簿・書類保存の要件には、対応してもしなくてもどちらでも構いません。事業者の都合で選択可能です。
今回は②のスキャナ保存についてのお話です。
スキャナ保存の対応によるメリット(DXによる中長期的なコスト軽減、など)もあれば、デメリット(導入時の短期的なコスト増)もあります。
スキャナ保存とは...
紙をデータ化して保存することです。
領収書、請求書、見積書などを「紙」でもらった場合や、「紙」で発行した場合※1、その「紙」を写真撮影※2したり、スキャナーでスキャンしたりしてデータ化し、スキャナ保存の要件を満たして保存することです。
- ※1発行した場合は、控えをデータ化します。
- ※2スマホやデジカメで直接データ化します。
スキャナ保存のメリット
- 紙の削減による紙書類の保管費用の削減(特に倉庫などを別途借りて段ボールを保管している場合など)
- 事務の効率化(特に経費精算の効率化)
- 持続的(サステナブル)経営の準備※
※事業の大小に関わらずDXしていかないと持続的な経営が難しくなります。
スキャナ保存のデメリット
- 業務フロー変更による業務サイクルへの縛り
- 税理士などの業務負担が増えることによる費用の増加
- 対応するのにあたり時間を割いたり、スタッフがいる事業者は社内周知したり、といった一時的なコスト増
などの可能性が考えられます。
その他、税務調査の効率化にも繋がるのかな、とも思います。事業者的にも税務調査に入られると時間と手間が取られるので、スキャナ保存の要件を満たしてデータ保存しておけば、紙をいちいち探すより手間が省けるようになるのではないでしょうか。
スキャナ保存の業務サイクル最大2ヶ月と概ね7営業日以内にデータ化して保存処理する必要があります。
処理期間が過ぎてしまうと、今まで通り紙で保存する必要が出てきてしまい、データで保存する書類と紙で保存する書類と2通りの保存方法の管理をする必要が出てくるので、業務がとても煩雑になってしまうことが予想されます。
保存処理
事務処理規程によりますが、紙の書類を受け取って、最長2ヶ月と概ね7営業日以内にスキャナーでスキャニングするか撮影(スマホでも可)をして要件を満たすシステム(ソフトウェア)で保存するか、タイムスタンプを付けて、その他必要な要件を満たして保存することが必要になります。この期間に処理できなければ今まで通り紙の書類を保存しておくことになります。
直近での対応をやめた方が良いと思う事業者について
- 電子帳簿保存法の制度、業務サイクルの期限などあまり内容について理解していない方
- 小規模事業者・個人事業主で電子帳簿保存法に時間を割くのは業務に支障が出る方
- 周りの事業者が対応するって言ってたからうちも対応したほうが良いかな、と思っているだけの方
- 紙の領収書や郵送での請求書などをもらっても、帳簿の入力(記帳)作業は、いつも申告前に一気に片付けている方
直ぐにでも対応を検討しても良いと思う事業者について
- ペーパーレスを進めたい、紙書類の保管代・保管場所に困っている、紙をこれ以上増やしたくない方
- 社内・事業所内での体制が整っている(整える予定)の方
- 税理士さんなど外注にお願いできる方
- 対応時に生じる業務負担増について、関係者全員の認識が一致している方
- この機会に一気に電子化(DX)したい方
- 急速に事業拡大している方やその予定の方
- 紙書類での経費精算が多い方
- 電子帳簿保存法について多少分かってないところがあっても『やる』と決めて覚悟ができている方
- とりあえずやってみて、思ったより大変だったら修正したり、どうにかすれば良いと思っている方
- 強制的にスキャナ保存に対応することで、定期的な事務作業の環境を整えて、申告直前の経理のつらさから解放されたい方
対応することが難しそうなら、無理をせずに今回は対応せず、自身の現況と、今後の事業や業態、業容などによってどういう選択をするのが良いか、少し時間をかけて考えてみるのも良いと思います。
結論
電子取引は、電子取引が1つでもある事業者は義務化なので準備を進めましょう。
スキャナ保存は、
- ①制度を理解している
- ②担当者が対応可能
- ③担当者が辞めてもスムーズに引継ぎできる
- ④制度について、そんなに詳しくは理解していないけど、この機会にDXを進めることにメリットを感じ、“やる”と覚悟を決めていてどうにかしようとしている
という事業者は検討してみても良いでしょう。
それ以外の事業者、不安がある事業者は様子見で良いでしょう。
補足説明
タイムスタンプ
タイムスタンプとは、データの時間を第三者が保証する仕組みです。タイムスタンプを提供している事業者と契約するか、タイムスタンプ機能が使えるソフトウェアを利用することで、タイムスタンプを書類などに付けることができるようになります。
事務処理規定について
社内事務の運用ルールを決めたものを明文化した書類です。
事務処理規定は、運用時にすぐに閲覧できるようにして、社内周知に利用します。また、税務調査の時に、担当者からどのように運用しているか事務処理規程を見せてと言われることもあるようです。
スキャナ保存で言うと、スキャナ保存の対象書類を決めること、処理期限(例えば、最大2ヶ月と概ね7営業日以内)を決めること、処理手順を決めること、等々どんな運用をしていくかのルールを定めたものになります。
事務処理規定のテンプレートは、国税庁|電子帳簿保存法関係|考資料(各種規程等のサンプル)にあるので、参考にしてみてください。