理・美容師、ネイリスト、アイリスト、エステティシャン、リラクなど従事者
インボイス登録後にどのようなことをすれば良いのか知りたい免税事業者
030理・美容業は簡易インボイスでも良いの?
インボイス登録が完了した後は運用をどうしていくか、というフェーズになってくるのではないでしょうか。
- インボイスは課税事業者にインボイスください、と言われたら対応したら良いから、今まで領収書を渡していたフローをインボイス登録番号書いた領収書をお客様にお渡しする運用にしたら良いかな
- インボイス発行したら写しの保存が必要になるけど、手書きの複写式の領収書使うか、レジで対応できそう
- 間違えた領収書をお客様に渡してしまったらお客様から発行し直して、と言われるかもしれないからスタッフにシェアしておこう
運用準備にあたり、ここまではなんとなく理解できた。
ところで、このような疑問が出てきた方はいらっしゃいませんか?
- 今まで宛名なしで領収書を出すこともあったけど、これからは領収書をインボイスとする場合、宛名は必須になるの?
- 宛名書かなくても良い適格簡易請求書※があるみたいだけど、それでも良いのかな?
※このケースだと宛名以外のインボイスの要件が記載されている領収書のこと
本記事の前提について
- インボイスは様式の定めがなく、領収書もインボイス登録番号など必要事項を記載していたら、インボイスを受け取ったお客様は仕入れ税額控除が適用されます。
- サロンワークのフローとして一般のお客様(一般消費者のお客様も、芸能関係のお仕事をされている方など理・美容が経費で認められるお客様も幅広く対応されているサロン)が対象で、必要なお客様に領収書を発行しているケースを想定しています。
事業内容により適格簡易請求書でも良いとされていて、理・美容業も適格簡易請求書(宛名以外のインボイスの必要事項を記載した領収書等)でも良い可能性があります。
次の業種が適格簡易請求書が交付できます。詳しくは、「消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A」参照してください。
- ① 小売業
- ② 飲食店業
- ③ 写真業
- ④ 旅行業
- ⑤ タクシー業
- ⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
- ⑦ その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
まず、理・美容業は該当するとしたら⑦になります。
判断するポイントが、『不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業』かどうかです。
簡単にいうと、いろんな多くのお客様にサービスを提供(髪を切る、エステやマッサージ・ネイル・アイラッシュの施術するなど)しているか、ということです。
次のような場合は『不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業』に該当します。
-
①資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、 取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
※例えば、サロンがいろんなお客様を対象としていて、「このメニューはいくらです」というような料金表があり、予約不要等でお客様が来店時に名前も聞かずサービスを提供するケースです。
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②事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、 相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業
※例えば、サロンが予約の際、お客様の名前を確認していても、いろんなお客様を対象としてサービスを提供するケースです。ただし、注意に該当する場合は適格簡易請求書の発行はダメ、ということになりますが、調べた時点で注意の理・美容における具体例は分かりませんでした。
注意
取引の相手方について 資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる 取引であることが常態である事業を除きます。
サロンの多くは広告や集客サイト、SNSなどで集客し、広く一般を対象にし、予約サイトやSNS、電話で予約を受付け(フルネームでお客様の名前を伺う)、このメニューはいくら、と価格設定がされていているケースが多いのではないでしょうか?
このような形態は適格簡易請求書(簡易インボイス)で良い可能性が高いです。実際に当社でサロン事業もやっているので確認してみたところ、予約時にお客様の名前を確認していて、料金表もあり、広く一般にサービスを提供している旨をお話したら適格簡易請求書で良い、との回答でした。
顧問税理士や管轄の税務署に適格簡易請求書を発行する業種に該当するか確認してみることをお勧めします。
インボイス制度はこれからのことで、まだ始まっていない、いわゆる前例がない、という状況です。
聞く人によって見解が分かれ、回答が変わってくることがよくあります。1度だけでなく、複数回確認してみることをおすすめします。
結論
予約時にお客様の名前を聞いていたとしても、広く一般を対象に施術などのサービスを提供していたら適格簡易請求書でも良い可能性があります。
適格簡易請求書でも良い場合は、領収書を適格簡易請求書とすると宛名なし(書類の交付を受ける事業者の氏名または名称を書かない)でお客様にお渡し可能になります。もちろん、宛名を書いても良いです。
個々の事業の性質により判断となるので、管轄の税務署に相談したり、税理士・会計士さんに相談してみましょう。
補足説明
インボイスの必要事項
インボイスは次の項目の記載が必要です。
- ①インボイス発行事業者の氏名または名称及び登録番号
- ②取引年月日
- ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- ④税抜き価格または税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
- ⑤税率ごとに区分した消費税額等
- ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
適格簡易請求書(簡易インボイス)は⑥の記載は不要で、④の適用税率又は⑤の消費税額等のどちらか1つがあれば良いです。
調査時点(2023/2末)での情報となります。
免税事業者
1月から12月までの売上が1,000万円以下の事業者
課税事業者(一般課税選択)
2期前の年間売上1,000万円を超えている事業者で一般課税を選択しているか、若しくは、年間売上(複数店舗経営している場合は全店舗の合計)が5,000万円を超える事業者
課税事業者(簡易課税選択)
2期前の年間売上1,000万円を超えている事業者で年間売上(複数店舗経営している場合は全店舗の合計)が5,000万円以下で簡易課税を選択している事業者