フリーランス(個人事業主)、免税事業者、課税事業者、経理担当者
027インボイスの基本
インボイスとは『消費税』についてのお話で、売り手(支払われる側)が買い手(支払う側)に対して正しい消費税額、税率を伝えるもので、指定された事項が記載されている請求書、領収書、納品書等のことを指します。
2023年10月1日から開始されるインボイス制度とは『適格請求書等保存方式』と言われています。
あなたは一般課税を選択している事業者で免税事業者に支払いをしていますか?
もし答えが『はい』か『分からない』ならば、インボイス開始後、何かしらの影響が出る可能性があります。
目次 / CONTENTS
- 消費税の仕組み
- インボイス制度開始後は?
- インボイスの登録・発行できるのは?
- インボイス登録をしていない事業者との取引について
- インボイスを登録したらどうなるの?
- 押さえておきたいポイント
- ・一般課税の事業者で免税事業者(フリーランスや個人事業主など)と取引する場合
- 補足説明
- ・免税事業者・課税事業者・一般課税・簡易課税・みなし仕入率・仕入税額控除・2割特例
まず、消費税の仕組みから見ていきましょう。
現在、一般課税(本則課税、原則課税と呼ばれることもあります。)で納税されている事業者は、下記の【消費税の計算方法】で税額を計算されていると思いますが、インボイス制度開始後は、自分がインボイスを登録しているかしていないかに関わらず、取引先がインボイスに登録していてインボイスを発行してもらえば、控除できますが、自分がインボイスに登録していも取引先からインボイスをもらえないと控除できなくなります。
【消費税の計算方法】
※1 サービス提供や販売時にお客様から頂く消費税
※2 仕事に必要なものを購入したり、サービスを受けたりする際に支払う消費税
例えば、110,000円(内、消費税10,000円)をお客様から頂き、77,000円(内、消費税7,000円)を業者に支払った場合、納付する消費税は、受け取った消費税10,000円から支払った消費税7,000円を引いて、3,000円(税率10%の場合)を納付することになります。
このように受け取った消費税から支払った消費税の差額を税務署に納付する計算方法を一般課税と言います。
インボイス制度開始後は?
つまり、インボイスをもらわないと、今までのように、実際に消費税を支払っているからといって、支払消費税が控除(仕入税額控除)されなくなります。
前述の110,000円を支払った例だと、受け取った消費税10,000円から支払った消費税7,000円は控除されないので、納税額が10,000円ということになります。
課税方法は、一般課税と簡易課税の2種類あり、2期前(個人事業主は2年前)の課税期間(個人事業主は1〜12月、法人は期首から決算月まで)の売上が1,000万円を超える事業者が対象になります。
インボイスの登録・発行ができるのは?
免税事業者のままだと、インボイスは発行できません。
インボイスを発行する為には、課税事業者になり、更にインボイスに登録しなければなりません。
インボイス登録をしていない事業者との取引について
- 2023年10月1日から2026年9月30日までは80%仕入税額控除
- 2026年10月1日から2029年9月30日までは50%仕入税額控除
例えば、一般課税の事業者がインボイス登録していない事業者に110,000円(内、消費税10,000円)を支払うと、一般課税の事業者は、消費税の10,000円は仕入税額控除されませんが、経過措置により、2026年9月30日までは、80%の8,000円が仕入税額控除されるので、2,000円の納付になります。更に、2026年10月1日から3年間は、50%の仕入税額控除となります。
2割特例と80%仕入税額控除は、違う制度ですので、混乱しないように注意してください。
インボイスを登録したらどうなるの?
インボイス登録事業者は、請求書、領収書などに事業者の登録番号を記載して発行します。
インボイスを登録すると、免税だった事業者も消費税を納付することになります。
自分の課税タイプにおいて、自分がインボイスを登録するかしないかと取引先がインボイスを登録しているかしていないかで何が変わるかの一覧表を次にまとめましたので、インボイスに登録するかしないかの判断の参考にしてください。
自分がインボイスを登録している場合と登録していない場合
(相手先が一般課税)
支払消費税の代わりに受取消費税に一定割合を掛けたものを仕入れ(支払消費税)とみなして計算されます。
押さえておきたいポイント
一般課税の事業者でインボイス未登録の事業者と取引する場合
補足説明
免税事業者
課税期間(個人事業主は1〜12月、法人は期首から決算月まで)の売上が1,000万円以下の事業者
国税庁の「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」もご参照ください。
課税事業者
課税期間(個人事業主は1〜12月、法人は期首から決算月まで)の売上が1,000万円を超える事業者
一般(原則)課税と簡易課税の2種類あります。
課税事業者(一般課税選択)
2期前の年間売上1,000万円を超えている事業者で一般課税を選択しているか、若しくは、年間売上(複数店舗経営している場合は全店舗の合計)が5,000万円を超える事業者
課税事業者(簡易課税選択)
2期前の年間売上1,000万円を超えている事業者で年間売上(複数店舗経営している場合は全店舗の合計)が5,000万円以下で簡易課税を選択している事業者。業種により異なりますが40〜90%のみなし仕入率で消費税の納付額を算出します。また、1事業者が複数事業区分を営業している場合は、事業区分ごとにみなし仕入率で計算するか、低いみなし仕入率で計算する必要があります。詳しくは、国税庁ホームページ(No.6505 簡易課税制度)をご覧ください。
一度選択すると、支払消費税が受取消費税を超えても(一般課税の場合では、消費税の支払いは無い状況でも)2年間(決算期2期分)は変更できないので、一定の消費税の支払いが発生します。また、簡易課税をやめる場合、変更可能になる決算期(最短で3期目)が始まる前日までに、忘れずに自分で変更手続きをする必要があります。
みなし仕入率
簡易課税を選択した際の消費税の算出方法です。売上に対する一定割合を仕入れ額とみなすことで、簡易的に消費税額を算出する方法になります。一定割合について、事業形態により第1種から第6種までの6つの事業区分に対しみなし仕入率が40%〜90%に設定されています。「みなし仕入率」について、詳しくは、国税庁ホームページ(No.6509 簡易課税制度の事業区分)をご覧いただくか、管轄の税務署や税理士等にご確認ください。
みなし仕入率の使い方
支払った消費税とみなす額(A)=売上の受取消費税額(B)×みなし仕入率
納税額=受取消費税額(B)-支払消費税額(A)
仕入税額控除
売上に係る消費税額から仕入れ等に係る消費税を差し引くことです。
2割特例
インボイス登録をしたことで課税事業者になった小規模事業者(免税事業者が課税事業者となり、免税事業者であるメリットを受けられなくなった事業者)に対する経過措置で2023年10月1日〜2026年9月30日までの属する各課税期間において、課税標準額(例えば、売上額)に対する消費税額の2割を納付すること。