015b電子帳簿保存法(電子取引)の無料システムを検討する際の注意点(後編)
デメリット・注意点
- ①費用面において、現時点で無料で提供されていても、将来、有料になる可能性がある。
- ②データのバックアップができない場合がある。
- ③一度使い始めるとシステムの利用を止めることが難しい。なんらかの事情で他のシステムなどに移行したくても制限を受けたり、実質移行できない場合がある。
デメリット・注意点①〜③について解説します。
電子取引は電子での取引履歴データを要件を満たした状態で最大10年間保存する必要があります。
多くの人は、何かを選択する際、『将来』のことより『目先』のことを重視する(現在バイアスと言います)傾向があり、その程度は、人によりますが、自分の現在バイアスを意識してみましょう。
- ①有料でも使いたいシステムかを考えましょう。
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システムの利用にあたり、最初は無料でサービスが提供されていても途中から料金が発生したり、サービス内容に変更が生じることはよくあります。
費用をあまりかけられない事業者にとっては『無料』はとても魅力的かもしれませんが、先々有料になる可能性があることを理解しておきましょう。
『無料』だけに着目して決めると、後々、最初から有料の他のシステムにしておけば良かった...という後悔が出てくる方もいらっしゃいます。 - ②バックアップを考えましょう。
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電子帳簿保存法の要件には、データのバックアップはありません。なのでデータのバックアップがないこと自体は問題ではありません。
個人的には次の理由からバックアップをとっておくことを強くお勧めします。
そもそも、ほぼ全てのシステム提供会社は、「データが無くなっても責任はとらない」と利用規約や同意書などに記載されています。
無料で使えるシステムを利用し、なんらかの事情でデータが無くなってしまうと領収書や請求書などのデータが何もない、という状態になります。そうすると、税務調査の時に『要件を満たして保存していない』と判断されてしまう場合があります。
データが無くなったことによる責任はシステム提供会社ではなく、利用する事業者ということになります。
この対策としては、
- リスクを考慮し、無料システムの利用をしない
- 自分は大丈夫(正常性バイアスと言います)と思い、事故やミスが起こってしまった時は諦めるか、特に何も起こらずちゃんと10年間保存できていたら、ラッキーというスタンスで利用する
- データが無くなった時のリスクも理解した上で利用をする
- 要件を満たした状態でデータの取り出し(エクスポート)が出来るシステムを使うか、エクスポートが出来ないシステムを利用する場合は、自分で要件を満たした状態でバックアップを取るようにする
などの選択肢があります。
- ③10年先のことを考えて選びましょう。
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前提に記載した通り、システムの利用を検討するにあたり、目先ではなく、最大10年間保存する、ということを踏まえて検討をお勧めします。
ただし、次のような懸念があります。
他のシステムに乗り換える時に要件を満たした状態でデータ移行できない場合、データを2箇所に置いておく必要があります。
契約を止めてもデータが残り閲覧できるシステムはあります。しかし、データは最大10年間保存・閲覧できる必要があるので、最大10年間、契約を止めたシステムと新しく使い始めたシステムの2つのシステムを運用する必要があります。
更なるリスクとして、次の2つが考えられます。
- ①契約を止めたシステムのサービス内容が変わったり、提供会社がサービス自体を止めた場合、アクセスできなく可能性もあり、その場合は、データの閲覧ができなくなり、電子帳簿保存法に対応していないことになってしまいます。
- ②将来、契約を止めたシステムが有料になった場合、データを保存するために必要期間まで料金が発生する、ということも考えられ、二重に費用が発生してしまいます。
この対策としては、
契約を止めるシステムから要件を満たした状態でデータを取り出し、新しいシステムにインポートできれば解決できる可能性があります。
システムを選ぶ際、何に着目するかによって判断が変わります。そこで、
無料システムの場合、無料で使えるというメリットに対して、どのようなデメリット(注意点)があるか、また、無料のメリットは、デメリット(注意点)より十分大きいかをよく検討し、システムを選びましょう。
検討しているシステムの注意点が知りたい、これ、どうだろう?などありましたら無料相談を行なっていますので、よろしければご利用ください。